周木律 |
眼球堂の殺人 -The Book- |
眼球堂の殺人 -The Book- 2017年5月4日(木) |
放浪の数学者と呼ばれている十和田只人は、世界的な建築賞を総なめにした天才建築家、驫木燿から招待を受け、二年前から彼を追い回しているルポライターの陸奥藍子とともに、山の中の「眼球堂」を訪れた。それは、大理石のお椀型の中に円形の吹き抜けの建物と柱が林立する奇妙な建物だった。他に招待されたのは、ノーベル賞を受賞した物理学者・南部耕一郎、精神医学者・深浦征二、芸術家の三沢雪、政治家・黒石克彦、建築雑誌の編集者・造道静香。夕食会に現れた驫木は、建築学こそが至高の座にあり、既存の学芸は建築学の付属物だ、それを証明するのが神の眼球堂なのだと語った。翌朝、柱の一つに驫木の死体がつき刺さっているのが見つかった。そして、電話はつながらず、外への扉も開かなくなっていた。次の日には、黒石が転落死し、南部が銃殺されていた。 綾辻行人を思わせる、奇妙な建物を舞台にした連続殺人事件。建物の謎や事件の構造は何となく想像できるが、十和田のキャラクターもユニークだし、図面もあっておもしろかった。ただ、他の学者、芸術家を殺害することで建築の優位を主張するというのは、どう考えてもまともじゃない。最後にもう一つ謎解きがあるのだが、どういう結末になったのだろう。謎だ。メフィスト賞受賞作。 |