小路幸也

東京バンドワゴン      

東京バンドワゴン 2009年6月19日(金)
 東京の下町のどこか、三代続く古本屋〈東京バンドワゴン〉。三代目店主は堀田勘一七十九歳、一人息子の我南人六十歳は伝説のロッカー。その長女は未婚の母で画家の藍子、藍子の娘花陽は小学六年生、長男紺は元大学講師でフリーライター、妻由美は元スチュワーデス、その息子研人は小学四年生、我南人の愛人の子青は女性にもてる旅行添乗員、という八人家族。そして語り手は、二年前に亡くなった勘一の妻サチ。紺は古本屋を手伝い、藍子と由美は古本屋の隣のスペースに作ったカフェを切り盛りしている。こんな家族と古本屋やカフェに入り浸る人たちとのホームドラマに、ちょっとした謎の出来事が起こる。たとえば、毎朝百科事典を2冊こっそり店に置いて、帰り持って帰る小学生の女の子とか。そして、そんな事件がすべて登場人物たちと絡み合い人情ドラマになり、家族の秘密も少しずつ明らかになってくる。
 メフィスト賞を受賞してデビューした作家だそうだが、この作品もおもしろい。一人ひとりのキャラクターがいいし、舞台設定もしゃれている。シリーズ化されているそうだ。