鈴木清剛 |
ラジオ デイズ | ロックンロールミシン |
ラジオ デイズ 2004年12月9日(木) |
カズキは高校を出て3年、カセットテープの加工工場で働いていて、半年前から6畳一間台所つきのアパートを借りて独立している。彼女はバイト先で知り合った1つ年下のファッションデザインの専門学校へ通っているチカ。そんなカズキのもとに、小学生時代の友達サキヤが1週間ほど泊めてくれとやってくる。友達といっても家が歯科医院で何でも持っていることを鼻にかけて、そのくせ人のものは取り上げてしまう、いやな奴だった。 サキヤはしていることや目的なんかは話さず朝早く出かけてしまい、カズキも通帳と保険証は持って出る。土曜日になるとチカがやってきて、3人で歩いたり、食事をしたり、飲んだりする。 若者の生活の一場面を描いたものだが、ここに出てくる若者達はどこか善良だ。洗濯物を干すのに人の家のベランダを見て研究したりとか、サキヤを警戒していることに後ろめたい気分になったりとか。そして、どこか宙ぶらりんなのだ。カズキはやりたいことがないことに気づいて進学をやめたし、チカもファッションなんか向いていないと思い始めている。文藝賞受賞作。 |
ロックンロールミシン 2005年3月10日(木) |
賢司は専門学校を出て、データベース会社でコンピュータでデータを操作する仕事をしている。高校時代の友人凌一は突然デザイナーになると言い出して、ファッションの学校へ通って、古着屋でアルバイトをしていた。ある晩、凌一は学校の先生の椿めぐみとカツオという若い男を連れてきて、会社を作って新しいブランドを作ると言い出した。仕事への気力が失せてきた賢司は、凌一の仕事場に時々寄って、そのうちボタン付けやアイロンがけを手伝うようになる。 友人なのだが、いわゆるリーマンとフリーター、世界が違うなと感じながらも、会社も辞め、展示会に向けての作品作りを手伝い始める。前読んだ「ラジオデイズ」もそうだが、大学へ行かずにまじめに働いている若者と、自由に生きているようなその友人の対比や、何かやりたいことを追い求めたり、自分の居場所を探したりという若者の日々が、軽く淡々と描かれているような感じだ。三島賞受賞作。 |