周防柳

八月の青い蝶      

八月の青い蝶 2016年9月18日(日)
 白血病を発病して推定余命期限も過ぎて自宅療養に切り替えることになった亮輔を、妻の多江子と娘のきみ子は家に迎えた。かつて亮輔が熱心に向かっていた仏壇から青い蝶の標本が見つかった。昭和二十年、十二歳の亮輔の父強は陸軍航空の戦隊長として台湾に出動中で、埼玉の基地で父の世話になった希恵という年若い娘が父の子をはらんで離れに暮らしていた。昆虫学者の娘だった希恵と亮輔は虫の話を通して、次第に心を通わせるようになる。そして、見つけた蝶が孵化するという日、広島に原爆が落ちた。
 被爆者の青春の恋を描いた作品。愛しい人を失ったことへの悔恨、原爆への怒りと生き残ったことの罪悪感、亮輔の人生は八月の繰り返しだった。小説すばる新人賞受賞作。