砂川文次 |
ブラックボックス |
ブラックボックス 2025年1月1日(火) |
サクマは自転車メッセンジャー
として都心を走っている。営業所からの配車で動いているが、業務委託の個人事業主扱いで、配送しただけ収入になる。多分重要な書類を運んでいるが、昼間走る街のオフィスも夜の生活の営みも、自分にとってはブラックボックスでしかない。自衛隊に始まって、不動産会社とか会社勤めもしてきたが、感情の暴発で仕事を転々としてきた。場面が突然変わり、サクマは刑務所に収監されている。所長に吐いた一言から仕事を干されるようになり、同棲している円佳が妊娠した。そして、無視してきた納税の件で家に来た税務署員や駆けつけた警察官に暴行を働いたのだ。 芥川賞受賞作がテーマの社会性とかで紹介されることもあるが、この作品もそうではないのかもしれない。「刑務所は制度だ。制度だけが未来を確たるものとして示すことができる。自分は遠くに行きたいと願いながら、一方で制度を希求していた。」どこかミシェル・フーコーを思わせる。 |