須賀しのぶ

革命前夜      

革命前夜 2019年4月3日(水)
 バッハに傾倒する眞山柊史は、バッハにゆかりのある東ドイツのドレスデンに音楽留学する。大学には天才肌のヴァイオリンの天才ヴェンツェル、正確無比な演奏をする同じくヴァイオリニストのシュトライヒ、ピアノ科には北朝鮮からの留学生李、ベトナムからの留学絵師スレイニェットなどがいた。ある日、柊史は教会でオルガンを演奏する女性クリスタと出会う。彼女は保安省の監視対象だという。柊史は父の戦中からの友人だったダイメル家をライプツィヒに訪ね、ダイメル氏の遺品であった楽譜を受け取る。そして、クリスタやダイメル家の人々との出会いから、柊史は東西冷戦下にあった東ドイツでの動乱に巻き込まれていく。
 ベルリンの壁崩壊直前の東ドイツへ音楽留学した青年が遭遇する激動の物語。 作者自身は音楽をやっているわけではないようだが、音楽についての表現がすごい。最後、ヴェンツェルやクリスタを襲った事件を巡るミステリー要素も加わる。大藪春彦賞受賞作。