宗田理

13歳の黙示録      

13歳の黙示録 2004年6月8日(火)
 文庫本を10冊ほど買ってくるとあいうえお順に並び替えて読んでいるだけなのだが、こんなタイミングで読んでしまうことになってしまった。
 秋元千佳は23歳の中学教師。小学校から申し送りのあったワルの升本幸雄のクラスの担任になり、教師としての責任感から愛情をこめて接しようと努める。幸雄は一時的におとなしくなってくるが、昨年までの同僚の教師内山との結婚が決まるとまた荒れ出す。そして、ゴールデンウィークにクラスの何人かと内山も入ってのハイキングの途中、幸雄は千佳をナイフで刺し殺してしまう。
 この小説は、最近多発する少年犯罪を背景に書かれた作品で、少年法の問題や、犯罪被害者の心理の問題にも触れているが、なぜ自分に愛情を注いでいる教師を殺したのかというミステリー小説でもある。この作品では、教師たちは熱心な教師で、事件は不幸なできごとでしかないが、現実問題としては、生徒の変化に気づかない、あるいはイチゴの包装箱の中から腐った1粒は除けてしまうような姿勢に問題があるのではないだろうか。血が怖くて授業拒否している場合じゃないよと言ったら、教師に厳しすぎるだろうか。 最後に事件の背景が明らかになるのが、この作品の場合は救いである。