雫井脩介

栄光一途      

栄光一途 2005年10月18日(火)
 柔道世界選手権金メダリストで、全日本チームの強化コーチ望月篠子は、全柔連の幹部から極秘の任務を命じられる。81キロ級の強化選手がドーピングをしているという告発があって、その選手を突き止めなければならなくなった。篠子は、大学の研究室の友人佐々木深紅と学生の堀内絵津子の協力を得て、学生で柔道の強化選手角田志織とともに選手達との面接を始める。疑惑の選手は圧倒的な強さを誇り、故障から復活した吉住新二と技のスピードで成長著しい杉園信司という二人のシンジだった。吉住には故障からの急激な回復とドーピング検査拒否による失格という疑念があり、杉園にはあまりも急な筋力の向上という疑惑があった。深紅は資料を集めて分析し、絵津子はドーピング疑惑のあるスポーツジムへバイトとして潜入する。
 合間に「シンジ」という人物が街で通り魔を働くシーンが出てきて、これもどちらが疑惑の選手か推測させるヒントかなと思わせるが、ラストの意外な結末に結びついていく。ドーピング選手、その背後にいる人間、過去の疑惑、通り魔事件といろいろ盛りだくさんで、柔道シーンも迫力があるし、女探偵チームも個性的でおもしろかった。新潮ミステリー倶楽部賞受賞作。