城山三郎 |
落日燃ゆ |
落日燃ゆ 2007年6月27日(水) |
昭和二十三年十二月、数人の男たちが横浜の火葬場の骨捨場にすてられた七人のA級戦犯の骨灰を拾い集めた。昭和三十年になって、厚生省はこの骨灰を各遺族に引き渡したが、広田広毅の遺族だけが引取りをことわった。
福岡の石屋の息子に生まれた広田は、学業成績が優秀で、一高、東京帝大と進学し、郷里の先輩で外務省に勤める山座との出会いから外交官を目指すようになる。各国を赴任した後、軍部が統帥権を盾に中国侵略を続ける中、外相、そして首相に就任する。外交交渉によって平和を維持しようとする広田に軍部が立ちはだかり、軍部自体も対立している有様だった。戦後、戦犯に指名され、戦争裁判を受けるが、広田は「自ら計らわぬ」という生き方から無言を貫き、死刑判決を受け入れる。 この作品を読むと、政府、天皇ですら軍部を制御できず、右翼や新聞が時局をあおりたてていた。軍の内部も対立し、上層部が軍を統括できず、特攻だ玉砕だと騒いでいた裏で講和の道を探り、戦犯で逮捕されれば仮病を使ったり人を告発したり。この国では誰が責任を取るのか、今でも問われる。先だって亡くなった城山三郎の代表作。毎日出版文化賞・吉川英治文学賞受賞作。 |