白石一郎 |
海狼伝 |
海狼伝 2007年6月11日(月) |
戦国時代、対馬で海女の手伝いを生業としている青年笛太郎は、元海賊で朝鮮王の下で宣略将軍と呼ばれていた男が帰ってくると、母親そでから生い立ちを知らされる。そでは松浦党の武士団呼子家の出で、宣略将軍は鴨打藤九郎といい、笛太郎の大叔父だった。そして笛太郎の父は、村上海賊の船大将だった。そでが書いた書状を持って宣略将軍を訪れた笛太郎は、将軍の右腕である金崎加兵衛の手下になる。青竜鬼というジャンクで海賊行為を働いていた笛太郎だが、ある時村上水軍の逆襲にあい、仲間の雷三郎とともに捕らわれるが、人見孫七郎の息子であることがわかって助けられ、能島小金吾という男の部下になる。 海と船に憧れ船の扱いの巧みな笛太郎、南宋出身の奴隷で武芸の腕の立つ三郎、商才を発揮する小金吾。そして、同じ海賊の対象でも冷徹残虐な宣略大将に、計算高い村上武吉、不思議な能力を持つ巫女で笛太郎と因縁のある晴、将軍の養女で小柄な女性だが武芸に強い麗花といった人物設定がおもしろい。戦国の時代背景や、笛太郎と三郎のロマンスも絡めて、痛快海洋冒険小説となっている。直木賞受賞作。 |