篠原一

壊音 KAI-ON      

壊音 KAI-ON 2003年12月2日(火)
 作者が17歳の女子高校生の時、史上最年少で文学界新人賞を受賞した作品だ。
 「壊音 KAI-ON」:ドラッグに溺れるタキの眼には、世界が崩壊していく風景しか映らない。介抱するハジメもいつかタキにシンクロしていく。「壊音だ。街の壊れてゆく音が、すべてを載せた鳥が飛び立つ音が、時間が流れてゆく音が、僕たちの耳のなかで、鳥の卵を探せと叫んでいる。胎動が、僕の身体を震わせている。・・・これは始動の合図だ。」
 「月齢」は、タキとハジメの関係をレンとユアンに置き換えたような作品。月が満ちるにつれて空腹感を強めるユアン、「本物が食べられなかったらダミーなんて意味がないんだ。僕は満足できなかった。あれが食べたい−・・・」
 どちらの作品も、幻想的で高校生とは思えない細密で執拗な描写が特徴的だ。登場人物も少年なのか少女なのかわからない。他者や世界を認識する原点に性があるのだとしたら、世界の崩壊と始まりに立ち会うのは 中性の子供がふさわしいのかもしれない。もう少し時間をかけて、イメージをきちんと定着しながら読んだほうがよかったかもしれない。