篠田真由美

未明の家 玄い女神 翡翠の城 灰色の砦
原罪の庭 美貌の帳 桜闇 仮面の島
センティメンタル・ブルー 月蝕の窓 綺羅の柩 angels-天使たちの長い夜
Ave Maria 失楽の街 魔女の死んだ家 胡蝶の鏡
聖女の塔 一角獣の繭 黒影の館 燔祭の丘

未明の家 2002年12月20日(金)
 これもおもしろかった。人物設定がおもしろい。W大大学院で建築史を研究している桜井京介が名探偵。朝が苦手で、クールだがお世辞もうまい。長すぎる前髪で顔が隠れているが、その素顔は振り返らない者がいないほどの美形。これじゃマンガだよね。それに、15歳なのになぜかいつも一緒にいるアシスタントで、超能力的な記憶力を持ち、おいしいコーヒーをいれる蒼と、肉体と行動力が武器の深春。「未明の家」なんてタイトルだと何となく不倫小説のような雰囲気もするが、これがキーなのだ。宝探しの謎はその辺で見当がついた。事件にかかわる母ととその姉、それに娘の4姉妹というのも、現代版横溝正史ワールドを感じさせる。舞台となる伊豆はダイビングで毎年行っているので、余計親近感を感じる。久し振りに、電車で寝ないで読んだ。

玄い女神 2003年5月2日(金)
 超美形建築科大学院生桜井京介と、謎の少年蒼が事件を解決するシリーズ。タイトルがいつも変だが、シリーズ2作目にして超難解。事件の中心人物が天才的な女優であるということがポイントになるが、何が事件の解決かということ自体が問題だ。最後の謎のヒントはこのページの少し下にある。確かにそれらしいことは何度もしつこく書かれている。インドでは「ヒジュラ」というらしい。今度調べてみよう。蒼の秘密も明らかになりそうになるが、中途で終わってしまった。
 あとがきを読んでいたら、なんと吉野朔美の名前が出てきた。単行本を買ってここで紹介しようと思っていたのだ。それと、読む前にあとがき読んだりはしないよ、ご心配なく。おもしろい人だ。同い年なんだ。

翡翠の城 2003年11月24日(月)
 日光の名門ホテルの片品村にある別邸碧水閣、和洋折衷の帝冠様式と思われるこの建築の調査を依頼され、教授の神代とともに、桜井恭介、蒼、栗山深春は日光に赴く。この碧水閣には、経営者一族の老婆が住んでいるが、かつて殺人事件や自殺があったといわれるいわくつきの建物だった。経営陣は皆どこかで血縁関係があり、碧水閣の取り壊しをめぐって対立があり、また後継争いもあるようだ。こうした中、殺人事件が起こる。この事件は活劇的に解決するのだが、建物にまつわる過去の事件をエアメールの宛名書きだけで解くのは少し無理を感じる。
 建築探偵・桜井京介シリーズの第3作目。今回初めて京介の指導教授神代宗が登場し、謎の少年蒼の秘密もほんの少し漏らされる。

灰色の砦 2004年5月1日(土)
 この作品では、建築探偵桜井京介とその仲間である栗山深春との出会いが紹介されている。二人が出会った大学近くの「輝額荘」という学生下宿で、年が明けたばかりの日曜日、下宿している学生の死体が発見される。アリバイから大家で学生でもある麻生ハジメが警察の取調べを受ける。続いて、この下宿を借りることになった講師で建築評論家である飯村の女性秘書が姿を消し、数日後死体で発見される。飯村が疑いをかけられるが、飯村の友人である神代教授の依頼で京介が深春とともに捜査を始める。
 ミステリーを読み続けていると、ある程度人間関係や背後の事情は読めるようになってくる。ただ、実行手順まで正確には読めない。この作品では、人物関係が重要なのだが、その点ではダマシがあって、ちょっと汚いかなという気もする。

原罪の庭 2004年11月17日(水)
 今回の舞台は、というか建築物はイギリスのパーム・ハウスという温室をモデルにしたと思われる資産家の温室。そこで3年前に起こった殺人事件について、神代教授がルポライターの女性の取材に立ち会うことになる。その事件というのは、温室内と建物で一家4人が惨殺され、一人の少年が温室に置かれたチェストの中で発見された、というもの。というと京介の助手蒼の境遇と似ているが、これはまさに蒼のケースなのだ。読んでいて、犯人や動機がさっぱり見当がつかなかったが、この事件のキーは誰が誰なのか、誰が何のために何をしたのか、ということだ。 基本ではあるが。漠然と、あれはあれじゃないのかな、という憶測はだいたいそうだった。事件が解決して、今度は桜井京介の謎が暗示されている。そういえば、という感じで次作も読みたくなった。この作品が、時系列的には2番目ということになる。スターウォーズ・シリーズみたいだ。

美貌の帳 2004年11月23日(火)
 桜井京介は帝国ホテルへ呼び出されて、明治の建築家コンドルに興味があるという伊豆の資産家天沼の知遇を得る。その後、天沼が後援していた伝説的な女優の復活公演に、伊豆の天沼のホテルに招かれる。演出家の意に反した演技で女優は老婆から若い美女へ変身するが、その後演出家は行方不明になり、さらにホテルのオーナーである天沼家の館が放火される。高校時代の先輩の兄の死と恋人だった天沼の娘との関係、天沼と伝説の女優との関係、天沼の娘と女優との関係、と謎は多い。そして、物語の中で桜井京介の謎もほのめかされるし、蒼も次第に成長していく。
 というわけで、事件そのものと同時に、シリーズの行方も気になる。この作品では、シリーズ第1作の人物がまた登場するし、女優ということで2作目からのインスピレーションもある。何一つむだにしない女性ならではのリサイクル志向にほとほと感服すると同時に、これからも楽しみだ。

桜闇 2006年1月4日(水)
 「建築探偵桜井京介の事件簿」という副題の短編集。「ウシュクダラのエンジェル」は、京介青春時代のトルコ旅行の思い出。建物と人の二重トリックが楽しめる。「井戸の中の悪魔」、「塔の中の姫君」、「捩れた塔の冒険」、「永遠をめぐる螺旋」は二重螺旋階段を持つ建築物をトリックに使ったもの。「捩れた塔の冒険」と「永遠をめぐる螺旋」は登場人物がだぶっていて、連続物としても読める。「迷宮に死者は棲む」は感傷的で、凝った謎解き物。「オフィーリア、翔んだ」は酒場で話しかけられてその話の真相を言い当てる、ちょっと雰囲気の変わった作品。「神代宗の決断と憂鬱」は神代教授の、「君の名前は空の色」は 蒼の、「桜闇」は京介の過去に触れたもの。主人公達の過去が少しずつ明かされてくるが、まだまだ肝心の部分がわからない。11月の連休から読みさしていたもの。

仮面の島 2007年3月22日(木)
 W大文学部教授神代宗と教え子の建築史研究者桜井京介は、ヴェネツィアにいた。小島とヴィラの売買のため、検分を依頼されたのだった。だが、所有者の玲子・希和・レニエールに会見すると、島を売る意志はまったくないということだった。一方、京介の友人深春と蒼も京介たちを追ってヴェネツィアを訪れ、さらに神代をパーパと呼ぶアントネッラという女性も鉢合わせしてしまう。玲子の亡夫の息子で会社を相続したアルヴィゼ・レニエール、玲子を訪れた後消息が途絶えた小宮という女性ライターを探して現れた編集者の藤枝が京介たちに接近してくる。そして、玲子に招待された島のヴィラへアルヴィゼを誘拐したという犯人グループが侵入し、玲子が所蔵しているジョルジョーネの絵を要求する。
 建築探偵シリーズ初の海外物。ところどころに女性殺人鬼(?)の独白があって、これがけっこう真相を紛らわしくさせている。この作品で、蒼の進む道も決まっていく。

センティメンタル・ブルー 2007年9月5日(水)
 「BLUE HEART, BLUE SKY」:12歳の蒼は、朝の散歩の途中奈々江さんというおばあさんと知り合い、その古風な感じの洋風住宅を訪れるようになる。ある風の強い雨の日、奈々江さんは昔その家で起こった悲劇を語り出した。
 「BEELZEBUB」:蒼が編入した向陵高校では、「BEELZEBUB」という落書き事件が起こっていた。同時期に編入して親しくなった結城翳の幼馴染藤嶺生は、「向陵伝説」と「ベルゼブブ」の謎を解こうとしていた。
 「DYING MESSAGE 《Y》」:蒼の同級生坂本広尾は、ネットで知り合ったEmiに聖ルカ学院の卒業生歓送会での演劇発表の前夜練習に招待された。練習の終わった帰り道、Emiからの電話に戻ると、Emiは死んでいた。
 「SENTIMENTAL BLUE」: 「ラ・マンチャの男」を見た劇場で、蒼はEmiの兄鷺沼蓉を見かけた。その夜、坂本広尾が蒼を訪ねてきて、歌舞伎町でEmiを見かけたと言った。そして、その歌舞伎町では切り裂き魔事件が連続していた。
 凄惨な過去を持ち、神代教授、桜井京介、栗山深春の愛情を受けて成長してきた蒼を主人公とした、建築探偵桜井京介シリーズの番外編。

月蝕の窓 2008年1月6日(日)
 桜井京介は、かつて殺人事件のあった明治時代に建てられた那須高原の洋館、月映荘の調査に向かおうとしていた。その前に、門野老人の依頼で京都へ行き、霊感少女の輪王寺綾乃に会う。綾乃は、危険だから行くなと言った。月映荘の隣には、元の持主の江原百合子という老女が、セザールというフランス人と、現在の持主印南茉莉とその心理療法士松浦とともに住んでいた。そして、京介が食事に招待された夜、かつての事件を目撃した小西老人が殺される。三年前京介が茉莉たちとともに初めて月映荘を訪れた時、心を病んでいた茉莉は血のつながらない兄の雅長がその事件の犯人だという記憶を取り戻し、その後雅長はアルコール中毒になった末マンションのベランダから転落死していた。そして、百合子は夫の愛人である印南あおいを殺した過去におびえていた。
 霊感少女、多重人格の茉莉、赤い色におびえる百合子、そして心理療法士の松浦と、今回は心理学に焦点が当てられている。京介が立ち会った事件は容易に推理できるが、過去からつながる糸と背後で人々を操る人物とその動機が大きな謎となる。今回は京介中心で、途中から深春が登場すると俄然おもしろくなる。京介自身の謎も提示されるが、こちらは断片的にほのめかされるだけ。

綺羅の柩 2008年8月2日(土)
 桜井京介は、旧知の遊馬朱鷺から依頼を受けた。彼女の知り合いが、タイのシルク王ジェフリー・トーマスの失踪事件の謎を追っているのだという。最初断った京介だが、霊感少女輪王寺綾乃からの手紙を受取って態度を変える。こうして、いつもの京介、深春、蒼、神代教授の四人と、遊馬朱鷺と夫で京介の先輩遠山は、弓狩惣一郎の軽井沢の別荘泉洞荘を訪れた。泉洞荘には、京介たちと同じ下宿にいたオグリこと佐立が惣一郎の秘書として来ていた。朱鷺は、惣一郎の後妻みつの娘星に相談を受けていたが、惣一郎は トーマスとは知り合いで、みつのために綾乃に 占いを依頼していた。夜、綾乃が占いを始めると惣一郎が取り乱し、明かりが消えた。そして、その朝、母屋の孤風亭で惣一郎が密室状態で死んでいるのが発見された。惣一郎の死は病死とされ、その後、京介たちはみつからトーマスが行方不明となったカメロン・ハイランドへ招待される。その前にタイへ立ち寄ると、みつや京介や綾乃のことが記事になっていて、京介は一人の少女に後をつけられる。
 実際のジム・トンプソン失踪事件をモチーフに、三十年間の愛憎劇を京介が解き明かす。読んでいくと過去の事情が想像できるのだが、実はそれが間違いで最後の悲劇を招くことになる。読者と登場人物を同時にミスリードさせる仕掛けだ。キャラクターのおもしろいシリーズだが、今回は綾乃の守り役の利根老人が加わって、さらにおもしろくなった。

angels-天使たちの長い夜 2010年5月4日(火)
 薬師寺香澄(蒼)が通う私立向陵高校。夏休み中の登校日、教師たちが昼食会の後倒れて救急車で運ばれて、生徒だけになった学園の校庭に見知らぬ男の死体があった。残っていた 生徒は15名。二年生の生徒会長大森海と書記の梶原知世と前役員の藤嶺生、図書委員の鈴木亜美と香西霧絵、屋上でマリファナを吸っていた黒須達斗と谷川広と谷川のガールフレンド後藤智香子と友人の根本沙友里、谷川を探していた剣道部の後輩武部郁也、そしてブリッジをやっていた庵圭一と酉水辰巳と御坂守彦に、薬師寺香澄と俺、結城翳。ミネオが警察に連絡するのはしばらく待って、アタシたちで犯人を見つけ出すと言いだし、鍵がかかった校内で犯人探しをしながら一晩過ごすことになった。大森は両親に虐待されて親戚の家の養女になり、梶原は家族に違和感を覚えていた。香西は亡くなった俳優の娘で過去弟が誘拐殺人の犠牲になっていて、その美少女香西を鈴木は愛していた。谷川は剣道一筋だった生き方に疑問を持ち、札付きの変人黒須に近づいていた。文学新人賞を受賞したことで苦しんでいた根本を後藤は支えようとしていた。鈴木と 香西の話を偶然立ち聞きしたカゲリは事件の真相に思いあたるのだが…。
 不可抗力ともいえる事件の裏にもう一つの悪意があった。蒼を主人公とした「建築探偵シリーズ」の番外編。

Ave Maria 2010年8月15日(日)
 蒼(薬師寺香澄)が体験したいわゆる薬師寺事件から十四年、親友の結城翳に自分のしたことを話そうかどうか迷っていた。そんな時、蒼の記憶能力の実験で知り合った小城という女子学生から「ママを殺した、あなたも殺したんでしょう」と言われ、その後「REMEMBER」と書かれた響と名乗る人物からの手紙が届くようになり、迷宮入り事件研究家を自称する斎藤という男に付きまとわれるようになる。京介や深春に頼りたくない蒼は、一人で解決すべく、過去の記憶を探り始める。
 「建築探偵シリーズ−蒼の巻」とでもいうか、「原罪の庭」の解決編。 薬師寺事件の真相が再確認できた。それにしても、蒼が異常に子供っぽいのはまだいいとして、翳との友情はかなり微妙で今後の展開が心配だ。

失楽の街 2011年9月21日(水)
 W大教授神代宗を、かつて事件で関わった群馬県警の刑事工藤が訪ねてきた。爆弾事件を起こして家出した少年を探してほしいということだった。手がかりは従妹の少女に送られた写真の背景の建物。神代の周囲では、先輩の元教授の安宅が朋潤会アパートの建替えや亡くなった息子の事故の真相で悩みを抱えているようだし、関わりのある劇団を主催する祖父江が行方不明になるといった問題が起こっていた。工藤からは、都内各所で模造の時限爆弾が見つかる事件が起きていて、その構造がかつての連続企業爆破事件のものと共通しているという情報がもたらされた。そして、「火刑法廷」というグループの予告とともに連続爆破事件が起こる。
 同潤会アパートに焦点を当てた、建築探偵桜井京介の事件簿シリーズ。 殺人事件は起こらなし、トリックもない。プロローグの部分で、犯行グループの正体はある程度予想でき、トガシ、サム、イズミ・ミズキの正体はわかったが、ソブエは意外だった。そこは取ってつけたような感じだ。

魔女の死んだ家 2012年5月5日(土)
 「崇拝者」を自称する男たちが集まる中、洋館の密室で資産家の美女小鷹狩都夜子が銃殺された。部屋の中に倒れていた元婚約者で都夜子の子供の父親で、銃の持ち主である橘瑞雄が犯人とされた。十年後、「名探偵」という男が関係者を屋敷のその部屋に集めて、当時の関係者、「子供」、「崇拝者」の男たち、「少女」の証言を聞かせた。
 名前は一切出てこないが、「名探偵」は桜井京介で、洋館の知識が証拠の発見に寄与している。「少女」と「子供」が紛らわしい書き方をしてあるが、きちんと区別できればだいたいの背景は想像できる。ただ、決闘用の銃や暖炉についてはまったくわからなかった。建築探偵シリーズのスピンオフ作品。

胡蝶の鏡 2012年10月8日(月)
 桜井京介と栗山深春は京都で、以前ベトナムで恋の手助けをした四条彰子とその義弟レ・ホン・ロンに会う。夫レ・ヴァン・タンとの仲が冷え込み、その原因は祖父レ・ヴァン・ティンが子供の頃離れに住んでいた日本人の自殺事件にあるらしいということだった。その後、彰子からハノイを出るが捜さないで欲しいという電話があり、ロンから彰子が失踪したとハノイへ呼ばれた。空港で川村千夏という女子大生と偶然知り合い、一緒にレ家を訪れると、グェン・ティ・ナムという女医が高慢な態度で迎えた。川村千夏にも不審なところがあるし、タンは姿を見せない。
 90年前の事件、そしてレ家で起こる女医の死亡事件、彰子失踪の謎に建築探偵桜井京介が挑む。シリーズ第3部の第1作。

聖女の塔 2013年8月17日(土)
 一年振りのW大のキャンパスで、蒼は劇団の手伝いで一緒だった川島実樹に呼び止められた。高校時代の友人でW大生の及川カンナが、同じ高校出身の海老沢愛子にCWAという宗教団体に連れて行かれて戻らないという。一緒に教会を訪れるとカンナは瞑想中だという。そして、入信を装って潜入した川島も戻らなくなった。深春はヨーロッパへ行っているし、京介とは連絡がとれなくなり、門野氏は入院中で、だれにも頼れない。その京介の部屋には誰かが侵入した形跡があった。CWAを取材しているというルポライターの宮本と知り合い、一緒に協会へ侵入するが…。一方、京介は深春の紹介で武智という私立探偵に請われ、新興宗教の信者十三人が焼死したという長崎の無人島を訪れていた。
 定番の建築探偵桜井京介の事件簿第12弾。 今回は、ホームズに対するモリアーティ教授のような人物が登場する。美しいと表現される京介だが、キムタクタイプか東山君タイプかと思っていたが、彫は深くなくて目が切れ長ということで、後者らしい。

一角獣の繭 2015年1月1日(木)
 セラピストとしてクライエントの心を操り殺人を犯させている松浦窮の脅威から薬師寺香澄(蒼)を守るため、門野氏の計らいで上高地に近い鏡平という会員制の別荘地に栗山千春とともに移すことになった。鏡平の森の中で、蒼はユニコーンのような少年に出会った。実は、福島の高原の別荘で起こった殺人放火事件の生き残りの七座晶那という少女だった。だが、晶那の母夏那が父の醍醐と同じような死体で見つかり、桜井京介も鏡平にやってくる。
 建築探偵桜井京介の事件簿シリーズの最後から3番目の作品。催眠、後催眠をかけて罪を犯させるというのではなんでもありではという感じもするが、慣れたシリーズなのでおもしろかった。次がどうなるのか楽しみになるラストだ。

黒影の館 2015年9月22日(火)
 桜井京介が姿を消し、身辺も整理されていた。栗山深春と蒼は、神代宗に京介のことを聞きに行く。二十二年前、イタリアの美術館で働いていた神代宗は、義父危篤の知らせに日本に帰った。義父はすでに息を引き取っており、葬儀の後無為に過ごしていた神代のもとに、義父の知り合いだという門野貴邦という男が訪れ、旅に誘われる。訪れたのは地図にも載っていない作り物のような町で、古いホテルに入り、猿橋という埋蔵金堀りを紹介されるが、気がつくと猿橋が死んでいた。この町を支配する久遠家の館に連れていかれると、そこにはアレクセイという美しい少年とその妹モイラがいた。そして神代は何度も命を狙われることになる。
 シリーズ中、ほのめかされていた桜井京介の謎、そのうち正体は明らかになった。次作がいよいよ完結編だ。

燔祭の丘 2017年1月6日( 金)
 姿を消した桜井京介(久遠アレクセイ)は、故郷の北海道で父グレゴリに囚われていた。京介の行方を探した深春と香澄(蒼)は目的も果たせず、深春は東京へ戻り、香澄は函館に残っていた。神代教授は辞職願を出して行方が分からなくなっていた。久遠グレゴリが使う犯罪者松浦は謎の実業家門野が捕らえていたが、逃げ出し門野を襲撃して姿を消した。秘書の高倉に要請で、深春は元霊能少女の綾乃と函館へ行く。香澄が函館で知り合ったニキという女性と大沼にある別荘へ行くと、そこには京介の叔母エレナと妹モイラ、そして神代教授がいた。
 建築探偵桜井京介シリーズの最終回。桜井京介の秘密が明らかになり、蒼や深春の先行きも決まり、ほぼ大団円で終わる。登場人物たちのファミリー的な人間関係が楽しいシリーズだった。