塩田武士

罪の声 歪んだ波紋    

罪の声 2019年10月14日(月)
 父から引き継いだテーラーの店主・曽根俊也は、母に頼まれて探しものをしていて、父の遺品らしいカセットテープとノートを見つけた。ノートには意味不明の英文が書いてあり、カセットテープを聴くと、自分の声で「ギン萬事件」で使われた犯人グループのメッセージだった。大日新聞文化部の阿久津英士は、社会部の年末年始企画、昭和・平成の未解決事件特集のため、「ギン萬事件」の取材をすることになった。こうして、異なる立場から二人の男が「ギン萬事件」の謎に迫っていく。
 グリコ・森永事件をモデルにしたミステリー。 事件の内容、報道については極力史実通り再現しているということもあって、真相は本当にそうだったんじゃないかと思わせる。山田風太郎受賞作。「週刊文春ミステリーベスト10」第1位。

歪んだ波紋 2022年2月6日(日)
 「黒い依頼」:関西の地方新聞近畿新報の記者沢村は、調査報道チームのデスクから交通死亡事故の容疑車両が遺族宅にあると写真を見せられて取材に出て記事にする。しかし、容疑車両の色は写真とは別のもの、社の調査報道チームの桐野の写真が間違いだった。
 「共犯者」:元大日新聞の記者相賀は、後輩から同期だった垣内が死んだという知らせを受ける。遺族をたずねるとその死は自殺だった。その死の直前にアパート火災があり、亡くなった女性はかつて消費者金融関係で垣内が書いた記事の誤りのせいで人生を台無しにしていた。
 「ゼロの影」:元大日新聞記者の美沙は、勤めている韓国語学校で盗撮犯の逮捕に出くわしたが、なぜか事件は報道されなかった。調べると、盗撮犯は人権派弁護士の息子だった。
 「Dの微笑」:近畿新報のデスク吾妻は、定年間近の先輩安田から政財界に影響を及ぼした大物事件師安大成の連絡先の確認を依頼される。テレビの深夜バラエティー番組で後姿が報道されていたのだという。番組関係者を取材するうち、この番組が取り上げたセクハラ問題も、安大成の件も捏造であることがわかる。
 「歪んだ波紋」:ウェブニュース「ファクト・ジャーナル」の三反園は記者の安田、桐野から安大成の独占インタビューのネット配信をもちかけられる。そして完璧な仕上がりの原稿を受け取り配信するが…。
 個々の記者が起こした誤報や捏造の謎を追った短編集かと思ったが、その背後におそろしい真相があった。吉川英治文学新人賞受賞作。