佐藤雅美

恵比寿屋喜兵衛手控え      

恵比寿屋喜兵衛手控え 2007年8月22日(水)
  およそ百軒の旅籠屋がひしめく馬喰町の恵比寿屋は、公事訴訟事の世話焼きもしている。ある日、越後から六助という若者が主の喜兵衛を訪ねてきた。兄の庄平が縮の手付金六十両を返せという江戸の正十郎という男からの訴状を突きつけられ、兄は正十郎という男は知らないというのだった。事情を確かめると、奥松という男を通して縮みを縮問屋三国屋を納め、その前金五十八両を受け取り、正十郎は自分への縮の手付金として奥松に六十両渡したのだという。そして、奥松は欠落して行方が知れなくなっていた。喜兵衛が訴状に目を通すと、かなりいかがわしいものだった。
 今で言えば司法書士事務所のような旅籠を舞台にした、江戸時代の法廷物。 夫婦の問題、子供の問題、若者の恋、旅籠同士の軋轢、そして喜兵衛自身が命を狙われる謎など、サイドストーリーももう一つの謎解きが隠されている。直木賞受賞作。