笹沢佐保

人喰い      

人喰い 2018年7月21日( 土)
 花城佐紀子の姉・由記子は、勤め先の社長の息子・本多昭一との結婚を反対されて解雇され、昭一と心中するという遺書を残して姿を消した。そして、昇仙峡で昭一の遺体だけが発見された。浦賀にある会社の工場で爆破事故があり、社長夫人が行方不明になり、由記子の姿が目撃されていた。さらに、工場再建現場で社長がナイフを刺されて死んでいた。警察は、由記子が生きているものとみて指名手配し、勤務している銀行を辞めさせられることになる佐紀子は、会社の組合の委員長であり、今は恋人である豊島宗和に相談して、捜査を始めた。
 1961年の日本探偵作家クラブ賞受賞作で、さすがに設定や素人探偵ぶり、犯行の動機を示すタイトルにしても時代をを感じさせるが、おもしろかった。「木枯し紋次郎」で有名だが、もともとは「新本格派の旗手」と呼ばれていたそうだ。帯に「たった5ページめくるだけで…必ず騙され続ける」とあったが、何度も見返しても該当するようなことは一切なかった。ただ、こいつが怪しいと思った奴が真犯人だった。読んでいて、テレビの2時間ドラマそのものだと思った。その辺の原点と言える作りかもしれない。