笹生陽子

ぼくらのサイテーの夏 楽園のつくりかた    

ぼくらのサイテーの夏 2005年2月22日(火)
  小学6年生のぼく桃井は、「階段落ち」の勝負に負けてその上階段から落ちて手首を捻挫し、罰として夏休みプールの掃除当番をさせられる。一緒に当番をするのは負けた相手の栗田という別のクラスの奴だった。栗田の家は噂では「カテイホウカイ。ハハ、イエデ。」だそうだが、桃井の家も父が単身赴任、優秀だった兄は不登校、母は家事も手抜きという状態だった。ある夜、頼まれた買物をするために塾をサボってぶらぶらしていると、散歩している栗田と妹と出会う。 このことがきっかけで、栗田と話をするようになり、桃井の家庭も変化していく。
 「このごろ、ぼくは、自分の時間を大事に使うことを覚えた。頭の中をまっ白にして走り続けることよりも、立ち止まること、振り返ること、考えることがだんぜん増えた。・・・僕にとっての人生の意味。重みや形や色や味。」
 「楽園のつくりかた」の作者のデビュー作。

楽園のつくりかた 2005年8月18日(木)
  東京の私立中学に通う優。突然母親が、社宅を出て父の実家に引っ越すと言い出した。そこはとんでもないド田舎で、中学校は生徒数16名の分校、同級生はたったの3人。ヘラヘラしたサルみたいな男の子、前髪で目を隠して大きなマスクをしている不気味な女の子、もう一人アイドル系のかわいい子は話をしたら男だった。あとの二人は山村留学生。優のエリートコースまっしぐらの計画は危うくなる。おまけに、祖父はボケかかっていて、優を父の博史と勘違いしている。優は海外に赴任している父とメールを交換し、全国模試を受け、パソコンクラブを作って自分の世界を守ろうとするが・・・。
 主人公優の語りで描かれているが、その語り口がいかにも要領のいい子らしくておもしろい。NHKのドラマで見て気になっていた作品。産経児童出版文化賞受賞作。