笹本稜平

時の渚      

時の渚 2005年1月26日(水)
  元刑事の私立探偵・茜沢は、ガンで余命半年の松浦という元ヤクザの老人から、子供探しを依頼される。35年前お産で妻が死に、医師を殴って生まれたばかりの赤ん坊を抱いて逃げ、公園で行き逢った女性に事情を話して預けてしまったのだという。茜沢を紹介されたという、刑事時代の上司真田と連絡を取ると、3年前殺人事件を起こして逃走途中自分の妻子を轢き殺した犯人がまた殺人を犯したという。当時の容疑者は被害者の息子で、茜沢と同い年で現在35歳 。
 子供を預けた女性がやっていた居酒屋のある豊島区、内縁の夫と住んでいた練馬区、出身地の長野県鬼無里村と手がかりを追うと、次第に女性の当時の事情が明らかになってくるが、それと同時に3年前の事件ともクロスしてくる。
 元刑事の私立探偵ということでハードボイルドになるのだが、暴力もないし、調査にあたる先々の人が善意あふれる人たちで、さわやかで楽しかった。先に結論ありきなのだが、それで終わるわけがない。結末は予感していたような感じだった。