佐野広実

わたしが消える      

わたしが消える 2024年5月6日(月)
 藤巻智彦は、病院で軽度認知障碍という診断を受けた。二十年前、あることから警官をやめて今は住み込みでマンションの管理人をしている。生まれてすぐ妻とともに別れた娘が、大学に入って上京し時々訪ねてくる。その娘・祐美が、介護の研修で通っている養護老人ホームに身元の分からない認知症の老人が置き去りにされたので身元を探してほしいと頼んできた。老人を放置した老女を探し当て、残していた荷物の中に名前の違う何枚かの身分証があった。仕事の合間に調査を進めるうち、周辺に偵察の影がうかがえるようになり、命を狙われ脅迫されるようになる。
 公安警察ものとでもいうのだろうか、どう決着するのかと思って読んでいたら、それなりの落としどころがあった。おもしろかった。江戸川乱歩賞受賞作。