桜井亜美

イノセントワールド      

イノセントワールド 2004年5月20日(木)
  17歳の女子高生アミは、高校生の売春組織に入っている。知的障害を持つ兄のタクヤとセックスしてしまい、タクヤが横浜に預けられた後も、時々ラブホテルで会っている。アミは、障害を嫌った母親の意思で精子ドナーによって生まれた存在だ。父親ではない父、兄を捨てた母を親とは認めず、自分自身、自分と世界の距離が果てしなく遠のくような感覚を抱いている。
 ただ、きらりと光る言葉は多いのだが、どこか薄っぺらな印象がする。こんな感じですと描いた感じで、作者自身の表現したいという痛切な思いは感じられない。作者はその方面のルポライター、そのパートナーはやはりその方面で著名な社会学者。情報はいくらでもあるし、それを社会心理学的に意味づけすれば、こんな小説はいくらでも量産できるという感じ。セックスで始まり、セックスで終わるだけの現象を追認しているだけという気もする。