櫻田智也

蝉かえる      

蝉かえる 2023年9月20日(水)
 糸瓜京助は山形盆地の〈御隠の森〉にある〈御隠神社〉を訪れ、民俗学者の鶴宮という女性と在野の虫好きという 青年魞沢に出会う。糸瓜は十六年前、震災のボランティアとしてこの村を訪れて、一人の少女が行方不明になっていて、糸瓜は神社で見かけた少女が姿を消すという謎に遭遇していた(「蝉かえる」)。他に、 救急車が現場に向かうと途中の交差点でも事故があり、事故にあったのは救急車で搬送された女性の娘だった(「コマチグモ」)。魞沢が知人の女性に招待されたペンションの中東からの客が、スカラベのペンダントをして遺体で発見された(「彼方の甲虫」 )と、ホタルの発行物質をめぐる事件の「ホタル計画」、アフリカ睡眠病を媒介するツェツェバエを扱った「サブサハラの蠅」。
 昆虫好きの青年・魞沢泉が、各地を旅行しては事件や出来事に遭遇して、真相の手がかりを示すという連作短編集。名探偵として事件を暴いて一件落着というわけではないので、少しわかりにくいところもある。日本推理作家協会賞、本格ミステリ大賞受賞作。