彩藤アザミ

サナキの森      

サナキの森 2017年12月27日 (水)
 私、荊庭紅は、二十七歳、実家にパラサイトしているインドア女。売れない作家だった祖父が亡くなり、祖父の書斎の本棚の最上段の本を手に取ると、「サナキの森」とあり、最後のページから白い封筒が落ちた。「こうちゃんへ」とあり、遠野市の佐代村という所の神社の岩壁をくり抜いた祠の裏に隠してある鼈甲の帯留めを探して墓に供えに来てください、と書いてあった。盛岡から高速バスで出かけて、その神社へ行くと東条泪子という美少女と知り合う。彼女の家にも曾祖母の遺品に「サナキの森」があり、その龍子が小説のモデルだったらしいことがわかる。龍子は曾祖父の死んだ弟の嫁として冥婚をして東条家に入っていた。そして、東条家では龍子の義母が密室状態の蔵で惨殺されるという事件があった。
 祖父が書いた小説と、現在が並行して進み、猟奇小説のようでもあり、密室トリックのミステリーでもあり、こじれた恋愛小説のようでもあるという、妙な小説でおもしろかった。新潮ミステリー大賞受賞作。