佐川光春

虹を追いかける男 縮んだ愛    

虹を追いかける男 2007年5月22日 (火)
 内容が他の作品のままだったので、後日訂正します。

縮んだ愛 2008年7月18日 (金)
 《私》は、夏祭りの夜、喧嘩をして警察に捕まった若い男に「先生」と声をかけられた。担任ではないが、小学校の教え子牧野だった。牧野は問題児で、《私》が担当する障害児学級の児童と問題を起こしていた。行きがかり上《私》は身元を引き受けた。《私》の家庭では、息子の浩介がイスラームに関心を持ち始めて部屋をアラベスク模様で覆い尽くし、妻の香子も入れ込んで家の中でもベールも着けるようになっていた。その二人がメッカへ巡礼に行っている間、牧野が仲間を連れて訪れてきた。一緒に缶チューハイを飲むと、その後毎週訪ねてくるようになった。ふと山を見たくなり一週間草津へ行って戻ると、警察から電話があった。牧野が襲われて瀕死の重傷を負い、昏睡状態に陥っていた。
 主人公は障害児学級を受け持つベテランの教員。障害児に熱心に取り組もうとする若い教師や、牧野の面倒を見ようとする妻を無防備な感情移入とするプロ意識の持ち主で、学校外で障害児に接触することは嫌う。そして、子宮癌の手術以来アルコールを飲まなくなった妻から離れて、一人ひたすら缶チューハイを飲み続ける。その結果、思いもかけない陥穽に陥ってしまうことになる。
 興味深い作品ではあるが、手記という体裁をとっているスタイルが、以前読んだ「生活の設計」同様、あまり好きではない。野間文芸新人賞受賞作。