小山田浩子

工場    

 2016年8月30日( 火)
 「穴」:夫の転勤で、<私>は夫の実家の隣りの、人に貸していた家に住むことになった。ある日変な動物を見かけて後を追うと穴にはまってしまい、隣家の奥さんに助けられた。実家の離れに男がいて、聞くと義兄だという。マイペースな義母、おそらくぼけている義祖父、四六時中携帯に打ち込んでいる夫。登場人物は皆どこか異常だ。
 「いたちなく」・「ゆきの宿」:登場人物が一緒なので、連作短編。ごく普通の夫婦と友人夫婦の話だが、この妻は友人夫婦との会話では夫に言っていたこととはまったく違うことを言ってしまう。やはりどこか変な感じだ。
 全く記憶にないが、芥川賞受賞作。

工場 2019年2月10日(日)
 「工場」:町に君臨する巨大な工場。面接して契約社員として採用されると、仕事は一日書類をシュレッダーにかけることだった。苔を研究していた研究室の教授から推薦されて就職した工場での仕事は、苔で屋上を緑化することで、たった一人苔に取り組むことになった。システムエンジニアとして働いていた会社を突然解雇され、恋人に紹介された工場での仕事は、毎日印刷物を赤ペンで校閲することだった。
 カフカを連想させる不条理な工場の世界。何の区切りもなく語り手が変わったり、人間関係があとからわかってきたり、もしかしたら時間も違っていたりするので、余計に不気味な感じがしてくる。新潮新人賞、織田作之助賞受賞作。 他に、「ディスカス忌」と「いこぼれのむし」。「いこぼれのむし」は、大企業の一部署に勤める女子社員、パート社員、管理職などを、それぞれの視点から語らせたもので、「工場」と同じような不条理さを漂わせている。