尾辻克彦

父が消えた      

父が消えた 2005年8月10日(水)
 「父が消えた」:八王子の墓地を見に行くことになり、出版社の編集者と一緒に電車で出かける。くだらない屁理屈話を交わしながら、子供の頃や父のことを回想する。
 「星に触る」:趣味のカメラ同人誌のガリ版を切りながら、言ったことを繰り返すだけの同人の仲間と電話で話をする。
 「猫が近づく」:高所恐怖症なので屋上が苦手なのだが、後輩から屋上をもらうことになる。屋上は妻と寝室にいるので、寝室に入ることができない。屋上とは猫のこと。
 「自宅の蠢き」:引越をする。ガラクタだらけの膨大な荷物。開かない鍵の交換。雨樋をつけたり、棚を作ったり。昔の生徒にそのつど手伝ってもらい、やはりくだらない屁理屈話を繰り返す。
 「お湯の音」:家に銭湯を出前してもらい、4畳半にできた銭湯に娘と一緒に入る。話としてはこれが一番おもしろかった。
 美術家赤瀬川源平の、芥川賞受賞作を含む初期短編集。作風というか語り口が保坂和志みたいだ。ライトなシュール感覚とでもいうか、そういった作品の先駆けなのかもしれない。