大島真寿美

宙の家 やがて目覚めない朝が来る    

宙の家 2008年1月23日(水)
 女子高生雛子の家はマンションの11階、「一一〇五」。父の理一は九州へ単身赴任中で、働いている母圭以子、塾に通っている小学生の弟真人、祖母の萩乃と暮らしている。ある日雪のためいつもより早く学校から帰ると、萩乃が女学校時代のお裁縫の時間へ入り込んでいて通信不能になる。そんなことが時々起きて、やかんを空焚きしたことから圭以子がヒステリックに騒ぎ出す。
 「空気」は「宙の家」の続編。学校から帰るとすぐに寝る雛子だったが、夏休みに入って地上に降りられなくなって、一日ほとんど寝て過ごすようになっていた。そんな時、真人が友達の郁丸君からの手紙を持ってきた。相談したいことがあるということだった。家を訪ねると、兄の様子が変だという。真人は、雛子も寝てばかりいて変だったから役に立つと思ったのだそうだ。その兄は、冷房を効かせた離れでひたすら自分で編集したビデオを見ていた。
 「宙の家」、宙ぶらりんの少女の心象を描いた作品。専用電話、モデム、ハチハチという言葉にえっと思ったが、十五年前の作品なのだそうだ。しかし、古さはまったく感じられないし、表現か簡潔で新鮮だ。朝日新聞の「2007年の1冊」で紹介されていた作家のデビュー作。
 「私はまだ、目が覚めたことさえなかったのではないだろうか。・・・昔々からただただ眠り続けていた。いつもいつも眠ってばかりいて、ただ時間だけが過ぎていった。いっそ眠り続けるならそれもいい。そう願っていたことも多分あったろう。それが楽だと思ったこともあったろう。眠り続けることの困難さに気づいた時から、どこかで起きようとしていた。」

やがて目覚めない朝が来る 2011年11月13日( 日)
 両親の離婚をきっかけに、有加と母は蕗さんの家に転がり込んだ。蕗さんは父方の祖母で、かつては女優だった。母のぶの母は大根役者だが、蕗さんに気に入られていたので、父の舟ちゃんと母は幼なじみだった。蕗さんの洋館にはいろんな人が集まってきた。事務所の担当だった富樫さん、芸能記者だった田幡さん、建設会社の会長の一松さん、衣装を担当していたミラさん。大人たちの会話を聞きかじって、有加は蕗さんの過去を知っていった。
 前半は蕗さんや有加の両親の物語、そして後半は題名が表すように、みんな死んでいく。そして蕗さんの死までの過程が描かれる。体言止めの多い軽くて短い文体で、死への割り切りも単純と言えば単純だが、母の晩年を思い出しながらすがすがしく読めた。