大沢在昌

新宿鮫 無間人形    

新宿鮫 2006年4月17日(月)
 鮫島は、キャリアでありながら警察内部の対立に巻き込まれて、新宿署で周りから浮いて一人捜査している。暴力団に手心を加えないところから、「新宿鮫」と呼ばれている。トルエンの密売グループの捜査の過程で知り合ったロック歌手の晶が恋人。改造銃を作っている木津を捜査している途中、新宿で 警官射殺事件が起こる。捜査本部が設置されるが、使われた銃が木津の銃らしいと知った鮫島は、単身木津を追う。
 警察ものやハードボイルドは好みでないので敬遠していたが、吉川英治文学新人賞、日本推理作家協会賞受賞作なので読んでみた。携帯電話がショルダーサイズであるところなどが時代を感じさせたりしたが、警察内部の問題、晶との関係、警察マニアなど、結構おもしろかった。

無間人形 2012年6月25日(月)
 渋谷、新宿、六本木の若者にアイスキャンディと呼ばれる五百円の錠剤が広がっていた。その正体は、量は少ないが覚せい剤だった。「新宿鮫」こと新宿署防犯課の鮫島は、逮捕した十代の末端密売グループへ供給していた男を張り込み追跡するが、厚生省麻薬取締官に妨害される。実は、アイスキャンディの製造元は地方の財閥の分家の香川兄弟で、名前を隠して新宿の暴力団藤野組の角へ卸していたのだった。密売グループの逮捕で、香川と角の思惑にすれ違いが生じる。一方、香川の地元では香川の行為を嗅ぎ付けたグループがその横取りを狙っていた。そのグループの一人は、鮫島の恋人晶の元バンド仲間だった。
 最初から覚せい剤の製造元、卸元の正体が出ているので、推理的な要素はほとんどなく、警察アクションものという感じ。登場人物のキャラクターや、ぎりぎりのタイミングのアクションはおもしろかった。「新宿鮫」シリーズ第4作で、直木賞受賞作。