大石直紀 |
二十年目の桜疎水 |
二十年目の桜疎水 2024年7月4日(木) |
「おばあちゃんといっしょ」:おばあちゃんは詐欺師だった。おばあちゃんは児童養護施設で生活していた私を引き取ってくれた。ある日女に通報されて逮捕されて、私は児童養護施設に戻った。就職して二年間で百万ほど貯めて、私は詐欺師になった。日本推理作家協会賞短編部門受賞作。 「お地蔵様に見られてる」:戻りたくなかった京都の支社に移り、学生時代走った道をジョギングしているとうずくまっていた女性が「逃すものか」と手を伸ばしてきた。泰弘のお母さんだった。 「二十年目の桜疎水」:スウェーデンに移り住んで二十年。母の危篤の連絡で日本に戻ると、母は雅子に手紙を出したせいでと謝った。家を訪ねると雅子はまだ住んでいて、事故のケロイドもきれいに治っていた。 「おみくじ占いにご用心」:上宮は訪問ヘルパーの跡をつけて、窃盗詐欺のターゲットを探していた。その日もうまく行っていたはずだが、盗んだ通帳で郵便局で金をおろした女が刑事につかまった。 「仏像は二度笑う」:幼いころから手先が器用だった正隆は、仏像に魅せられて中学を卒業すると仏師に弟子入りした。しかし賭け事を覚えるとやめられなくなって破門され、贋作作りの工房で働くようになる。 「おじいちゃんを探せ」:おじいちゃんには秘密がある。私が生まれる前に離婚したおじいちゃんから、おばあちゃんに年賀状が届いていると両親が話しているのを聞いて、ミステリー小説が趣味の私はおじいちゃんを探すことにした。両親もおばあちゃんもなぜか話したがらない。 詐欺師が詐欺師をだますという話が多いので、スッキリ決まることは決まるが、あまり後味は良くない。最初の「おばあちゃん」と最後の「おじいちゃん」が良かった。「お地蔵様」はホラーっぽい、「仏像」は人情物っぽい、といったところか。 |