荻堂顕

擬傷の鳥はつかまらない      

擬傷の鳥はつかまらない 2025年6月21日( 土)
 舞伎町でネイルサロンを営んでいるが、裏の稼業は偽物の身分を与えること。沢渡幸という自分の名前さえ偽物だ。そして、〈雨乳母〉として門を開いて決して冒されることのない世界へ失踪させる仕事もしている。メイとアンナというデリヘリで働いている未成年の女の子が依頼にやってきた。一度帰すが、メイがビルから飛び降りて死ぬ。アンナと追及すると、佐伯という男に追われているのだという。アンナたちの店の店長大久保から呼び出されると、元締の暴力団から佐伯を捕えるよう脅され、大久保と一緒に手がかりを探し始める。
 サチの手に門を開く鍵が現れて、門の中に入るとそこは失踪希望者にとってありえた最良の世界になっている。メイとアンナの背景には家庭を逃れて暮らす少女たちに起こった殺人事件があり、サチも妹と大切な人を失ったことから門の鍵を手にするようになった。SFファンタジーのような世界を背景にしたハードボイルド。新潮ミステリー大賞受賞作。おもしろかった。