沼田まほかる

九月が永遠に続けば ユリゴコロ    

九月が永遠に続けば 2011年11月23日(水)
 八年前別れた精神科医の雄一郎からの電話で、高校生になった娘の冬子が犀田という自動車学校の教官と付き合っていると知らされた。冬子は、雄一郎が再婚した元患者の亜沙実の連れ子だ。佐知子は教習所でたまたま細田の教習を受け、付き合うようになる。ある日、夜ゴミを出しに行った息子の文彦がそのまま失踪した。翌日、新聞に犀田が駅のホームから落ちて死んだという記事があった。雄一郎に文彦のことで連絡すると、犀田と一緒にいた冬子が警察で聴取を受けているという。文彦の同級生で近所のナズナの父服部の協力を得て、佐知子は文彦の担任、友人、そして冬子に事情を聞いて歩く。文彦と冬子が会っていたこと、文彦が許されない愛に悩んでいたらしいことが分かってくる。
 文彦は事件に巻き込まれたのか、それとも何かの事情があって姿を消したのか、犀田の事故との関連は、と興味しんしんで読んで行くのだが、結末はあっけない。しかも、何か伏線があるとも思えない。ホラーサスペンス大賞受賞作。 何がホラーで何がサスペンス何だろう。

ユリゴコロ 2014年4月19日(土)
 次々と不幸が襲いかかってきた。最初千絵が失踪し、父が末期のすい臓がんと診断され、母が交通事故で命を落としてしまった。父を見舞いに実家を訪ねると留守で、書斎の押入れの口の開いた段ボール箱の底に四冊のノートがしまってあった。〈ユリゴコロ〉とタイトルの書かれたそのノートには、殺人に取りつかれた人間の告白が書かれていた。読んでいくうちに、この人物が女性であることがわかる。これは母が書いたのだろうか、それとも父の創作だろうか。僕が四歳の時長期入院していて、その間に家は東京から奈良に引越し、退院して家に入った僕は出迎えた母をお母さんじゃないと感じたということがあった。僕は弟に相談したり、戸籍謄本を取り寄せて調べたりする。一方、経営するドッグランを備えて喫茶店の開店以来の従業員の細谷さんは、千絵の行方を捜してくれていた。
 次第に恐るべき真相が明らかになっていくが、これだけでおしまいかなと思っていたら、最後にもうひとひねりあった。やはりそうかという感じもしたが。感動的なミステリーだ。大藪春彦賞受賞作。