法月綸太郎

頼子のために 誰彼 生首に聞いてみろ 一の悲劇

頼子のために 2003年2月23日(日)
 殺された娘の父親が犯人を突き止め、復讐を遂げて自殺を図る過程が書かれた手記が冒頭紹介される。それならこれで終わりだが、スキャンダル隠しのため動員された推理作家法月綸太郎が、この手記の矛盾に気づく。となればもう一つの結論は想像できるが、この小説も結末は寒々しい。それにしても、ミステリーに挑もうと思ったら、時刻表を作りながら読まないとだめなようだ。

誰彼 2003年3月9日(日)
 殺人予告された新興宗教の教祖が、教団の密室から消え、その数時間後、とあるマンションの1室で首なし死体が発見される。登場人物紹介に、「法月倫太郎−詭弁家」とあるが、この探偵は、最後に解決するまでに、詭弁を弄して誰彼となく犯人に決め付けてしまう。実は、「たそがれ」と読むこのタイトル「誰彼」がポイントなのだ。これを先に読んでいれば、「頼子のために」の動機も理解しやすかっただろう。

生首に聞いてみろ 2007年1月2日(水)
 推理作家法月綸太郎は、高校の後輩の写真家田代の個展会場で、田代のファンだという江知佳という若い女性と知り合う。彼女の叔父は、綸太郎の知り合いの翻訳家川島敦志だった。江知佳に田代を紹介しようとする矢先、彼女の父で有名な彫刻家川島伊作が急死してしまう。葬儀を前に、綸太郎は川島敦志から電話で相談を受ける。美術評論家宇佐美が企画した回顧展に出展するため伊作が作っていた、江知佳の体から石膏で直取りした彫刻の顔が切断されて持ち去られていたというのだ。これは江知佳に対する殺人予告なのだろうか。生前、伊作は秘書の国友レイカとの再婚を考えていたという。そして、江知佳の母律子は、自身の妹で自殺した結子の夫だった各務と再婚していた。江知佳はかつて評判の悪い写真家堂本峻のストーカー被害にあったことがあり、彼の仕業ではと疑われた。そんな中、江知佳が行方不明になってしまう。
 状況設定や人物の動き、犯行の動機など、その説明が無理に無理を重ねたという感じで不自然で、素直には楽しめなかった。法月綸太郎の作品には、推理のための推理という趣きがあるが、それにしてもやりすぎという感じがする。本格ミステリ大賞受賞作。

一の悲劇 2013年1月4日(土)
 総合広告代理店の局長を務める《わたし》に、妻の和美から電話があり、息子の隆史が誘拐されたという。家に戻ると隆史は風邪で寝ていて、誘拐されたのは迎えに来た近所の茂だった。 犯人から身代金を要求する電話があり、お金を用意し、犯人に言われるまま車を走らせ、警察の追跡を断って単身受け渡し場所へ行くが、急ぐあまり階段で転倒して気を失ってしまった。そして、茂は犯人が告げた場所で遺体で発見された。茂の母路子とはかつて関係を持ったことがあって、茂は《わたし》の子だった。《わたし》は、妻の妹次美の元夫で、隆史の本当の父である三浦を疑ったが、三浦には名探偵法月綸太郎と一緒だったというアリバイがあった。
 本当に人違い誘拐なのか、犯人の目的はなんなのか、謎のままだが、主人公はひたすら三浦にこだわり、突破口を見出していく。しかし、登場人物のほとんどが一度は容疑者になるくらい、二転三転する。あっと驚くほどのトリックもどんでん返しもないが、おもしろく読めた。