西加奈子

通天閣      

通天閣 2013年12月1日(日)
 通天閣の見えるマンションに一人暮らして、百円ショップに卸す商品を組み立てる工場で働く《俺》。若者っぽく描かれているが、実は40過ぎで、過去には妻子もいたらしい。アメリカへ留学に行った恋人と暮らしていたアパートに一人住み、ぼったくりスナックで黒服のチーフをしている《私》。二人の今をやり過ごすだけのどん底の生活が交互に描かれる。
 男のほうには、《俺》に気のありそうな向かいの部屋の男とか、うどん屋の女性店員や、タクシーの交通整理をするじいさん、女性のほうにはスナックのオーナー、ママ、客など、おもしろいキャラクターが描かれて、それぞれ惨めでおもしろい。ラスト二人の世界が交差し、読者には意外な真相が明らかになるが、それぞれ自分の人生を見つめ直すことになる。若い作家ではあるが、若者の作品という感じではなくて味わいがある。織田作之助賞受賞作。