西村健

地の底のヤマ      

地の底のヤマ 2015年6月29日 (月)
 昭和四十九年、猿渡鉄男は大牟田署の派出所勤務の警官だ。三池炭鉱労働組合のナンバー3が死体で見つかり、地元出身ということで捜査本部に県警から派遣された安曇刑事の捜査に協力することになった。会社側と対立する旧労組と協力的な新労組が対立する中での事件だった。鉄男の父は街中の人々に慕われた名物刑事だった。その父の名声のおかげで、関係者から重要な証言を得ることができた。十年ほど前、炭塵爆発事故が起こった時、父は何者かに殺害されて事件は迷宮入りしていた。そして鉄男自身、友人の白川、菅、櫟園とその日大きな罪を犯していた。
 上下巻1400ページの大作。昭和四十九年、五十六年、平成元年、現在と四部に分かれ、それぞれで事件が起こり解決していくので、シリーズものにすれば4冊に分けられる。 それぞれの事件の解決だけではなく、鉄男が犯した罪、父の事件の謎、そして三池炭鉱をめぐる社会の動きが雄大に描かれる。吉川英治文学新人賞、日本冒険小説協会大賞受賞作。 直木賞の候補にもなっているが、受賞しても良かったのではと思う。