難波利三

てんのじ村      

てんのじ村 2003年12月24日(水)
 「てんのじ村」とは大阪市西成区山王町あたり、しかし昔天王寺村だったので縮めて「てんのじ村」で通っている。その路地裏に長屋があり、多くの芸人たちが住んでいた。戦争が終わり、ラジオ放送が始まり、さらにテレビ放送が始まり、売れて長屋を出て行く芸人がいる一方で、ラジオからもテレビからも声がかからずドサ回りで くすぶる芸人もいる。これは、そんな芸人たちの40年を描いた作品だ。
 昭和59年の直木賞受賞作だが、全然覚えがない。奥付を見ると1992年第2刷と印刷してある。10年間も書店の棚か、出版社の倉庫で眠っていたのだろうか。大阪の芸人の生活や心情が生き生きと伝わってきて、思ったよりおもしろかった。読んでいて、こんな芸 、テレビで見たような気もするなと思ったりもするので、実在の人物を反映しているのかもしれない。芸人の世界も大阪の街も知らないのだが、実際に 顔を見て声を聞いているような感覚で読めた。