中脇初枝

魚のように      

魚のように 2003年6月10日(火)
 「魚のように」、「花盗人」の2つの短編集。ともに、両親から期待され愛された姉と、ほとんど存在感のない弟または妹の心の世界を描いている。前者は姉弟の反感と共感が描かれているのに対して、後者は妹の自立が中心に描かれている。美しく、わがまま勝手に振舞って、そのことで誰よりも自分自身が傷ついていく、そんな姉とそれを見つめる弟の関係というのは、作者自身の覚醒と旅立ちを表現したものかもしれない。
 17歳の高校生による第2回坊っちゃん文学賞受賞作。文体がシンプルで、さすがにまだ未成熟な感じではあるが。
 ところで、繊細な少女とか少年とか、ミステリアスな女とか、少年のような男とか、いつまで言えるのだろう。ある程度の年になると、ただのおやじ、おばん、でしかなくなるのだが。でも、たまにテレビに出てくる、中年で太った元アイドル達のように居直るのもいやな感じだ。