中村航

リレキショ ぐるぐるまわるすべり台    

リレキショ 2005年10月28日(金)
 姉さんに拾われて半沢良になった僕は、仕事につくため履歴書を思いつくままに書き、もう1枚白紙の紙にもう少し意志と勇気のあるリレキショを書いて冷蔵庫に貼る。そして、履歴書を持って行って面接して、ガソリンスタンドの深夜勤務につく。時々姉さんの友達の山崎さんがやってきて、食べて飲んでギターを弾いて変な歌を歌う。山崎さんに言わせると、姉さんは拾い上手で友達も夫も弟も拾ったのだという。
 そんなある日ガソリンスタンドに原付の女の子がやってきて、手紙を渡して去っていく。夜中受験勉強の合間に、双眼鏡でいつも見ているのだという。そして合図に体操をしてほしいと書いてあった。
 ストーリー自体も現実離れしているし、妙に細部にこだわる登場人物やエピソードが独創的で、不思議におもしろかった。文藝賞受賞作。

ぐるぐるまわるすべり台 2006年7月21日(金)
 僕は大学に退学届けを出し、務めている塾の授業のコマ数を増やしてもらう。個人授業で教えている中に、ヨシモクという登校拒否中の風変わりな生徒がいる。そして、携帯電話のバンドメンバー募集専用サイトで、ヨシモクの名前でバンドメンバーを応募する。
 毎週同じ時刻に通う老教授、その教授が語る黄金比と黄金らせんの極方程式、ご飯を4合炊いて6等分して目玉焼きを載せて朝昼晩食べる、生徒の心をつかむスキルを持つ塾の教室長、突然フリーズする生徒、仲のいい二人の女子生徒の仲違い、そんな関係あるようなないようなエピソードがおもしろい。
 リセットボタンを押し、始まりの音を聞き、何かを決めて部屋を出て行く。そんなストーリーだろうか。そういえば「リレキショ」も、主人公は前歴を捨てて他人の弟になって暮らしているんだった。
 「一周回ったんだ、と僕は思った。一周回ったスタート地点は、かつて僕がいた場所とは違う。始めたこと、始めなかったこと、聞いたこと、語れなかったこと。・・・ぐるぐるまわるすべり台に乗って僕らは回る。」野間文芸新人賞受賞作。
 「月に吠える」は、「ぐるぐるまわるすべり台」でバンドに参加するギターのてつろーとドラムのチバ、工場に勤める二人の出会いとQCサークルを描いたサイドストーリー。