中町信

模倣の殺意      

模倣の殺意 2013年6月23日 (日)
 坂井正夫という男が、青酸カリを飲んで自室の窓から転落して死亡した。出版社の編集部員である中田秋子は、現行のリライトを頼もうと坂井に電話してその死を知った。坂井は、流行作家であった父瀬川恒太郎のもとに原稿やノートを持ち込んでいた。秋子は、坂井のアパートであったことのある遠賀野律子という女を疑い、富山へ行く。一方、かつて新進の推理作家として認められながら今は雑文書きをしている津久見伸助は、坂井の自殺を週刊誌に事件記事として書くよう依頼された。推理小説の新人賞を受賞した坂井とは同人誌の仲間だった。津久見は、坂井の第二作をかたくなに没原稿にし続けた編集者の柳沢邦夫を疑う。そして、坂井の第二作は、瀬川が山岳誌に発表した作品の盗作だった。秋子は遠賀野の、津久見は柳沢のアリバイトリックをそれぞれ見破るのだが、事件と結びつくものではなかった。津久見は取材を続けるうち、自分と同じように調べている秋子の存在を知り、真相に近づく。
 40年前の作品で、表題が三度変更されて四つあるという異色な作品。フィルムカメラのトリック、新聞記事からの推理など、時代を感じさせるが、明らかに折原一が模倣したと思われるトリックが仕掛けられている。読んでいてどこかおかしいなと思っていたが、こういうわけかと納得。それにしても、秋子と津久見のあまりに単刀直入すぎる探偵ぶりには突っ込みたくなる。