中島たい子

漢方小説

漢方小説　2008年2月5日（火）

みのりは三十一歳の脚本家。ロデオマシーンのように体が震えて救急車で病院に担ぎ込まれた。昔つきあっていた男と会ったら結婚するという話を聞いて牡蠣を飲み込んでしまい、それ以来胃の調子が悪かったのだ。救急外来で『救急マニュアル・ハンドブック』を持った若い医師に「わからない」と言われて帰ったみのりは、別の大学病院、両親が通っているクリニック、最後は窓から見える老人養護施設のクリニックに走ったが、どこでも『異状なし』ということだった。もらった漢方薬を口に放り込むと、高校の時に体質改善の為に漢方医に通っていた記憶がよみがえった。実家近くの漢方診療所で診察を受けると、「ドキドキするのは、ここでしょう？」とあて られてしまった。『青テント』と呼んでいる居酒屋で飲み仲間、大学時代からの飲み仲間の森ポン、森ポンの務めている設計事務所にいる志保さん、大学の１学年下の茜ちゃん、出版社で働く日野のオッサンたちと中医学の話をしたみのりは自分の病について考えていくが、医師は「あなたの病名は『色々なところが弱い』というあなただけの病気です」と言うのだった。 　放送作家出身らしいくすぐりの多い中に、三十代女性の心が浮かび上がる。第２８回すばる文学賞受賞作。 　「私ぐらいの歳の女がよくする自問だそうだ。自分はどうしたいのか？・・・私の書く多くの作品同様、はっきりしたものは浮かばなかった。人生まで駄作だ。私はどうしたいんだろう？三十一歳のこんな女のテーマはなんだろう？」