村山由佳

星々の舟      

星々の舟 2006年3月27日(月)
 水島家の人々を主人公にした連作短編集。大工の棟梁重之と晴代の子、貢は学生時代から家を出ており、幼い次男暁は後妻の志津子に連れ子の沙恵とともに育てられた。暁と沙恵は愛し合うようになるが、沙恵の父が重之だということがわかり、暁は荒れて家を出る、といったところが物語の背景。
 「雪虫」は、北海道で仕事を家族を持った暁が主人公で、急死した志津子の葬儀のため久し振りに実家を訪れ、沙恵と再会を果たす。
 「子どもの神話」は、ギクシャクした家族の中でひょうきんに振舞ってきた末娘美希の、不倫に甘んじる孤独が描かれている。
 「ひとりしずか」は、幼馴染との婚約を破棄して一人生きていく決心をする沙恵の心境に焦点があてられる。
 「青葉闇」では、五十過ぎて役所でも出世から外れ、野菜の栽培に情熱を持つようになった貢の中年男の感慨が描かれる。
 「雲の澪」では、幼馴染の男の子を好きなのに、頼まれて親友に紹介してしまった貢の娘聡美が遭遇する事件が描かれる。
 「名の木散る」は、一転して重之の戦争体験がテーマとなる。
 テーマ的に関連しあうのは三話までで、あとは中年、少女の世界、そして最後はまた内容が大きく飛躍してしまう。作品全体としてのまとまりというかテーマ性に疑問を感じる。それと、表現というか言葉に魅力がないというか雑というか、 ストーリーを書いただけという感じがする。直木賞受賞作。