村田沙耶香

授乳 ギンイロノウタ しろいろの街の、その骨の体温の コンビニ人間

授乳 2010年8月15日(土)
 「授乳」:家庭教師にやって来た大学院生の先生は無機質な人だった。その先生の手首に傷を見つけてから、ゲームをするようになる。そして、自分の乳房をくわえさせる新しいゲームを始める。
 「コイビト」: 毎日8時きっかりにハムスターのぬいぐるみホシオと一緒に眠ることに、一日のすべてをかけている。デパートのトイレでホシオに唇を押しこんでいると、小さな女の子に声をかけられた。美佐子という少女も、ムータというオオカミのぬいぐるみと愛し合っているのだった。その日美佐子と付き合ううち、次第に嫌悪を感じてくる。
 「御伽の部屋」: 気がつくと、関口要二という気遣いだらけで丁寧な同い年の大学生の部屋にいた。マンションの前で日射病で倒れていたのだという。お礼に行くと、要二の前ではなぜか不器用で口下手な自分になっていた。そのうち毎日要二の部屋へ通うようになり、お互いに同じセリフを話し、役割を演じるようになっていく。
 「授乳」は群像新人文学賞受賞作。 どの作品もかなり特異な設定になっているが、「コイビト」がユニークでおもしろかった。「授乳」はちょっとグロテスク。「コイビト」と「御伽の部屋」は、ミステリー風の落ちがあるところがいい。

ギンイロノウタ 2014年4月27日(日)
 「ひかりのあしおと」:誉は小学校の二年生の時、ピンク色の布地に包まれた怪人に公園のトイレに閉じ込められて、テープの呪文を聞かされて、光を恐れている。友達を作るのは下手だが、恋人を作るのは上手で、ずっと連続してレンアイを繰り返すようになった。レンアイをしている初期段階では、いつも光への恐怖が薄れる。大学の教室で横に座った芹沢蛍を家に誘った。
 「ギンイロノウタ」:有里は臆病で愚鈍な子供だった。近所の文房具屋で見つけた銀色のステッキを、テレビアニメの「魔法使いぱーるちゃん」の魔法のステッキに真似て、押入れの襖に向かって「私を黒い部屋へ連れて行ってください」と囁いた。家族に背を向ける父と、時々オカアさんンからアカオさんに変わって本性を現す母との生活。ステッキで自慰するようになり、「げっけい」が訪れて男たちに見つめられることを望むようになる。中学三年になると担任の熱血教師が、毎日有里を前に立たせてスピーチさせようとした。有里はノートに教師への殺意や殺人の情景を書くようになる。
 どちらの作品でも自分の世界に孤立し、いつしか殺意を膨らませていく少女が描かれているが、「ひかりのあしおと」のほうが救いがあっていいような気もする。「ギンイロノウタ」のラストは難解。野間文芸新人賞受賞作。

しろいろの街の、その骨の体温の 2017年4月11日(火)
 イメージカラーが白だというニュータウンで育った結佳は、若葉ちゃん、信子ちゃんと仲良し。集会所の書道教室には、同じ学年の伊吹くんも通っていて、背も低く押さない伊吹くんは結佳にはおもちゃのようだった。中学に通うと、女子はグループに分かれるようになり、結佳は地味な四人組、信子ちゃんは一番下の二人、若葉ちゃんは一番上のグループに取り入っていた。伊吹くんは男子の一番上のグループに入っていた。街にも学校にも嫌悪感を持つ結佳は、目立たないように過ごし、信子とも若葉とも、そして伊吹とも書道教室以外では話さないようにしていた。
 文学少女はこんな作品好むのかなという感じの作品。三島由紀夫賞受賞作。

コンビニ人間 2018年11月22日(木)
 私は少し奇妙がられる子供だった。幼稚園のころ、公園で死んでいた小鳥を焼いて食べようと言ったり、小学生に入ったばかりの時、男子がけんかをしていて「誰か止めて」という悲鳴を聞いてスコップで頭を殴ったり。その度問題になって親に心配され、必要なこと以外喋らず自分から行動しないようにして、小学校、中学校、高校と成長していった。大学一年生のとき、道に迷ったオフィス街で「スマイルマート日色駅前店」を見つけ、「オープニングスタッフ募集!」というポスターを見て応募して採用され、二週間の研修の後働き始めた。私は、初めて、世界の部品になることができた。私は、今、自分が生まれたと思った。気がつけば、その後18年、店長も店員も何人を入れ替わる間、同じコンビニで働き続けてきたのだが…。
 話題になった芥川賞受賞作。この作家の登場人物、女の子、若い女性、は皆外部に対してk妙なスタンスを持っていて興味深いのだが、この作品がいちばんおもしろかった。話題になった芥川賞受賞作。