盛田隆二

夜の果てまで      

夜の果てまで 2004年7月5日(月)
 冒頭で1998年9月、1991年3月に外出したまま戻らない涌井裕里子の失踪宣言申立書が夫により提出されたということが明かされる。物語は1990年3月に始まる。北大生の俊介がたまたま入ったラーメン屋の奥さんは、土曜の夜俊介がバイトをしているコンビニにやってきてチョコレートを1個万引きしていく美しい女性だった。それがきっかけで、裕里子の義理の息子で中三の正太の家庭教師をすることになり、裕里子の家庭に入り込む。7月、花火大会で二人だけになり家庭の事情を聞かされデートに誘われ、あとは 想像どおりの成り行き。夫に知られて、裕里子は荷物をまとめて逃げ出し、俊介もそれに付き合って東京へやってくる。北海道新聞に就職が内定している俊介はホテルかウィークリーマンションでほとぼりを冷まそうとするが、裕里子は覚悟を決めていて浜松町近くでアパートを借りて家財道具を買って水商売の仕事も始める。
 冒頭にあるように、いったん札幌の夫の元に戻るのだが、その後また失踪してから7年間のことは何も語られていない。この二人がどんな人生を送るんだろう。一緒だとしても分かれていたとしても、おそらく住民登録もなく、戸籍も抹消されて、裏側の世界で生きていくしかないのかもしれない。その辺がタイトルの意味合いだろうか。