森晶麿

黒猫の遊歩あるいは美学講義      

黒猫の遊歩あるいは美学講義 2014年12月19日 (金)
 二十四歳で博士課程一年目でエドガー・アラン・ポオを研究している私は、同じ二十四歳で美学の教授になった天才「黒猫」の付き人を担当教授から仰せつかった。毎日顔を合わせるうち、出会った謎を黒猫と一緒に解決する。「月まで」は母が持っていたでたらめな地図の謎、「壁と模倣」は壁から声が聞こえたと言われた後自殺した同じゼミの学生、「水のレトリック」は香水作りの女性が出会った男性のため作った香水の瓶が川に捨てられいた謎、「秘すれば花」は学会に来るはずだった女性准教授が行方不明になる事件、「頭蓋骨の中で」は姿をくらましていた詩人が再び現れ、入れ替わるように映画監督ができ死体で発見される事件、「月と王様」はギリシャ音楽研究の大家の何もない書斎で音楽が聞こえてき謎。
 日常の謎パターンだが、どのストーリーも根底に男女の秘めた愛があり、ポーの作品と絡めて真相を解き明かしていくところがユニークだ。黒猫と私のコンビもおもしろい。第1回アガサ・クリスティー賞受賞作。