桃谷方子

百合祭      

百合祭 2003年10月9日(木)
 1軒1軒独立したつくりになっている毬子アパート。そこに渡辺淳一のような老人が越してきたことから、住んでいる独り暮らしの老女たちがにわかに色づき始める。老人の性を面白おかしく描いているようにも思えるが、実際は若さと老いといったことを突き詰めようとしている。年をとらない人間はいないし、死なない人間もいない。北海道新聞文学賞受賞作で、映画化もされているそうだ。
 「赤富士」は、中学生の少女がお母さんとパパと過ごす何気ない休日の風景が、玄関のチャイムでもう一人の「おとうさん」が登場することから驚くべき変貌を遂げていく。あっけなくて、どう考えていいのかわからない。しかし、おもしろい作家ではある。