モブ・ノリオ

介護入門      

介護入門 2007年10月1日( 月)
 同族会社を辞めて金髪に染めて大麻を吸う俺は、玄関で倒れて頭蓋骨折して寝たきりになった祖母を母とともに介護して、夜中に三度起きて身体を拭いておしめを換えている。要約するとそれだけのことだが、その中に介護士とか血族とかこの国の社会への文明批評的なものが散りばめられている。
 「YO、朋輩(ニガー)」といったラップ調で息の長い文体。最近よくあるハイパー口語体とでもいうような文体はあまり好みではないが、その中でも好きになれない文体だ。しかし、この文体がなければこの作品は文学作品として評価されることはなかっただろう。普通の文章で書けば、偽悪を装った自分褒めが鼻につく介護日記に過ぎないから。話題になった芥川賞受賞作。
 他に、「市町村合併協議会」と「既知との遭遇」。社会批判というか反体制的な精神というか、そちらこの作家のテーマであるようだ。たわいないとも言えるが、「既知との遭遇」はおもしろかった。