目取真俊

水滴      

水滴 2004年1月9日(金)
 「水滴」…徳正が昼寝していて夕方目が覚めると、右足が冬瓜のように腫れて、声を出すことも身動きもできなくなっていた。親指の先が破れて水が滴りだし、やがて夜な夜な旧日本軍兵士の亡霊が部屋を訪れ、その水を飲んでは帰っていくようになる。彼らは、沖縄戦で敗走する中、壕に置き去りにした兵士たちだった。芥川賞受賞作である。
 「風音」…村の崖の中腹に以前風葬に使っていた空間があり、そこに旧日本軍兵士の頭蓋骨が置かれて、風が吹くと物悲しい笛のような音が流れる。
 どちらも、沖縄戦末期の行動に秘密、恥辱、畏れを持ちながら戦後を生きてきた人たちの物語。「オキナワン・ブック・レビュー」は、荒唐無稽な書評という体裁を借りて、沖縄の内側を描いているようだ。