松尾由美

ハートブレイク・レストラン      

ハートブレイク・レストラン 2009年7月4日(土)
 寺坂真衣は二十八歳のフリーライター。東京郊外のアパートでひとり暮らし。家にこもっていると息が詰まるので、ノートパソコン、手帳、携帯電話をリュックにつめて外に出かける。ちょくちょく訪れるのは駅前から少し離れた街道沿いのファミリーレストラン。ほかの店よりすいていて、ビジネスマンや学生が少なく、常連客が多い。その常連の一人が和服のお婆ちゃん。友達から携帯が入って、仕事先の編集部で編集長がなくした指輪が、秘書が作ったケーキの中から出てきたという話をしたら、そのお婆ちゃんに呼ばれた。お婆ちゃんはその不思議な出来事の真相を鮮やかに解いてみせた。そしてお婆ちゃんはどんどん色が薄くなり、空気の中に溶けて消えてしまった。店長が言うには、お婆ちゃんは二十年前に亡くなった幸田ハルさん。心のさびしい人、幸薄い人だけにその姿が見えるのだという。
 幽霊お婆ちゃんが、ちょっとした不思議な出来事の謎を解いてみせる連作ミステリー。そして幸薄い寺坂真衣に幸が訪れるのか…。おもしろかった。