松尾スズキ

クワイエットルームにようこそ      

クワイエットルームにようこそ 2007年10月20日(土)
 ゲロでうがいする夢を見て目が覚めたら、手足を拘束され、酸素マスクと点滴をされていた。同棲している放送作家の鉄ちゃんと大喧嘩の末別れ話をした後、一人で缶チューハイを空けながら、半年前まで通っていた心療内科で処方された向精神薬や睡眠薬や精神安定剤や抗鬱剤をつまみ代わりにかじりまくったのだった。救急車で搬送された病院は精神病院だった。拘束を解かれた明日香は閉鎖病棟の冒険を始め、自傷系の主婦栗田さんや拒食症の少女ミキと知り合う。病棟には自分の髪に火をつけた女(チリチリ)、テレホンカードを高く売りつける西野さん、毎日退院を企てる金原さん、五年半も病院に閉じ込められている愛ちゃん、などいろんな患者がそれぞれの事情を抱えて過ごし ていた。ただの事故だから間違ってここにいるんだと思う明日香だったが。
 精神病院への入院体験と入院患者たちを軽いのりで書けばおもしろいものになるのは当然だが、摂食障害ぐらいしか扱っていないのは作者の節度の現われだろうか。明日香の傷が明かされてくると次第に重くなってくる部分もあって、その重さも印象的だった。
 「あたしは、つまらない国には到底いられないし、かといって、冗談の国にいても罪悪感感じちゃうし、書きたいことを書ける環境まで手に入れたのに、実は書きたいこともないし、自分の場所も自分で決められない中途半端な生き物なんだから。」