松岡圭祐

催眠 千里眼 完全版 万能鑑定士Qの事件簿T・U  

催眠 2010年11月7日(日)
 インチキ催眠術師実相寺へ女が声をかけてきた。みどりいろの猿にかけられた催眠術を解いてもらいたいという入江由香という女は、突然甲高い笑い声を発して「ウチュウジンのアンドリア」と言ったかと思うと、理恵子と名乗ったりする。不思議な予知能力を発揮するので、<占いの館>で雇うと行列ができるほど客が集まるようになり、マスコミにも取り上げられた。東京カウンセリング心理センターの臨床心理士で催眠療法を専門とする嵯峨敏也は、解離性同一性障害、多重人格障害を疑い、彼女に近づく。そして、彼女の後を追うと、もう一人跡をつけている男がいることに気づく。
 証券会社での2億円横領事件が絡んできて、一応ミステリーということになるが、それとは別に最後のどんでん返しには驚いた。ただ、わかった上で最初のほうを読んでみても、いまいち納得できない部分はある。「完全版」ということで、旧作とはかなり違っているそうだ。

千里眼 2013年5月10日(金)
 「恒星天球教」という信仰カルト教団によるテロが頻発していたが、ついに米軍横須賀基地のイージス艦が侵入され、ミサイルが首相官邸を標的にセットされ、暗証番号も変更されてしまった。危機管理センターの呼ばれた航空自衛隊の航空総隊司令官仙堂は、東京晴海医科大付属病院の千里眼と渾名されている臨床心理士の友里佐知子とその下で働いている岬美由紀を呼ぶことにした。岬はかつて、自衛隊の戦闘機パイロットだった。友里の力で危機を脱することはできたが、岬がカウンセリングを担当している小学生の女の子が房総半島の観音像を訪れ、タクシーに保護されて病院へ連れられてきた。そのポケットには教団の経典が入っていた。
 キャラクターに魅力があるし、ミステリーっぽいところもあって、おもしろかった。アクションがちょっとそこまでやるかというところもあるし、ミステリー的には反則技に近い結末だが、連休に読むにはちょうど良かった。

万能鑑定士Qの事件簿T・U 2014年8月4日(月)
 週刊角川の若い記者小笠原は、最近東京で増殖している力士シールと呼ばれる不法シールの取材のため、パソコンで見つけた「万能鑑定士Q」という事務所を訪ねる。出てきたのは猫のような瞳の美しい若い女性だった。凛田莉子というその女性は、先客が持ち込んだ絵を、豊かな知識と鋭い観察力と洞察力で贋作と見破った。小笠原は、どんな学歴の持ち主なのだろうと興味がわいた。 実は、石垣島の高校生時代、凛田莉子は成績オール1の劣等生だった。そして、進路希望は就職先も決めないまま東京へ出るということだった。そんな彼女がどうして天才鑑定士になったのか、そして力士シールの謎を解けるのか。そして、 その前に、本物としか鑑定できない偽札が出回って、日本はスーパーインフレに陥ってしまった。
 おもしろかった。知識ゼロ、読解力、記憶力ゼロの莉子が鑑定士になっていく過程もおもしろいし、力士シールや偽札の謎解明もおもしろかった。催眠シリーズ、千里眼シリーズといったシリーズ作の中で、一番おもしろいと思う。綾瀬はるかの主演で映画化されたそうだが、おそらくぴったりはまっていると思う。