松樹剛史

ジョッキー      

ジョッキー 2005年5月29日(日)
 30歳目前にした騎手中島八弥は、かつて所属していた千葉厩舎に日本を代表する馬主兼生産者大路グループの息子が所属することになり、フリーになるがほとんど騎乗のない状態に陥る。調教とたまの騎乗依頼でなんとか生活している毎日だが、とんでもない素質馬に乗ることになる。
 厩舎の先輩騎手糺、調教師の娘の真帆子と八弥の関係、仕事を奪うことになった新米ジョッキーの大路と取材するテレビ局の女子アナウンサー会沢と八弥、騎乗依頼された馬の担当厩務員秋月智子、有力馬を抱える独善的な馬主伊能、同期で天才騎手といわれる生駒、そういった実在の人物を思わせる登場人物と、騎手の目を通したレースの模様がものすごくリアルで、本当に競馬サークルの中で生活してレースを見ているような気分になれた。馬の乗り味がどうとか、馬の気性がどうとか、騎手のテクニックがどうとか、本当にあるんだなと思えた。著者は特に競馬の世界で暮らしていたというわけでもないようだから、すごい取材力と創造力ということになるんだろう。ちょうどダービーもあったので、すごく興味深く読めた。小説すばる新人賞受賞作。