丸山天寿

琅邪の鬼      

琅邪の鬼 2013年10月25日(金 )
 中国、戦国時代に全土を統一した秦王は、山東半島の港町琅邪の海上に現れる神仙の島を見て、この島を手に入れることを条件に、研究所や造船所の費用を負担することにした。徐福塾と呼ばれる研究所には多くの若い学者が集まっていて、巫医(医者兼易者)たちが庶民を治療していた。求盗(警察官)の希仁は、巫医の助言を犯罪捜査に役立てていた。琅邪では古くからの商人東王と新興の商人西王が競い合っていたが、希仁は西王家で鬼が出て、斉の王室に伝わっていた璧(宝物)がなくなったと相談を受けて、徐福塾に塾頭の残虎を訪ねた。易占を得意とする安期と助手をしている桃が西王屋敷へ向かった。その後、西王の長男の孟が患い、長女の芳が孕み、東王の娘銀花が押し付けられた結婚を嫌って行方を消し、さらに謎の事件が相次いで起こった。
 古代中国を舞台にしたミステリーだが、歴史色は全く感じない。最後に謎の人物が登場して、噂に詳しい行商女から一度話を聞いて、一度調査に出かけただけで、絡み合った不思議な出来事をすべて解き明かすのは、まさにシャーロック・ホームズ。そういえば、こんなストーリーがどこかにあったような気もする。メフィスト賞受賞作。