真梨幸子

殺人鬼フジコの衝動      

殺人鬼フジコの衝動 2011年12月31日 (土)
 小学五年生の森沢藤子は不細工。両親は金銭感覚がなく、給食費も払えず、家では虐待され、学校では凌辱を受けていた。その両親と妹が惨殺され、生き残った藤子は叔母の茂子に引き取られた。事件で家族を失ったかわいそうな子として大人たちを懐柔して生きようとする藤子だが、カンニングを優等生のコサカさんに見つかって追及され、殺してしまう。大人ってちょろい、バレなきゃ悪いことじゃない、が藤子の口癖になる。そして、いい生活を手に入れるために、次々の殺人を犯して行く。 
 読み始めてすぐ、かなり後味が悪そうで、買わなきゃよかったと思ったが、慣れればそれほどでもなかった。最初の「はしがき」にある、主人公のフジコ、そしてこの小説を書いて亡くなった女性、それを世に出そうとしている「私」という3人の女性が存在しているということ、それと藤子の家族を殺した犯人の言葉がその後何度も繰り返されることに気づけば、「この本はあとがきまでが物語です。頭をガツンと殴られたような衝撃が待っています」などということはまったくない。ちょっと誇大広告である。